《帝国という統治システム》
<帝国> 帝国には二種類の意味がある。ひとつは、「帝国主義」等に代表されるように、国家形態に関わりなく覇権主義的な拡大路線を志向する国家を指す場合。もうひとつは、皇帝などと称される世襲権力者による専制政体を有する国家を指す場合である。前者の代表としては<月=地球系共同体>があり、後者の代表としては5205年に成立した<帝国>が挙げられるだろう。 帝国概説 【帝国市民】 “以下の条件全てを満たす種族(民族・系統)に所属する者を帝国市民と認める。 帝国には上記条件を完全には満たさず、故に帝国市民として認められない者も存在した。 【帝国の統治思想】 |
1、帝国の議会制度 帝国は三つの議会を有する。すなわち、<枢密院><元老院><議院(帝国議会)>で、「帝国三院」と通称される。枢密院は帝権を、元老院は行政を、議院は民意を、それぞれ反映させ、司る。 <枢密院> <元老院> <議院(帝国議会)> |
2、皇帝という仕組みと皇帝の権能 <皇帝>は世襲されるものの、即位には議院の承認が必要である。しかし、現実に承認されなかった例はない。 過去に存在したいかなる王朝と比較しても、帝位の継承といった側面で特筆すべき事柄は少ないが、ただひとつだけ特徴的と思われる点は、皇位の継承が末子相続という形をとっていたことである。末子は男女に関わりなく帝位継承権者となる。医学的な処置により皇統に属する者(あるいは中央の出身者)が長命であった為にこうした継承方法が採られたと考えられている。 皇帝は<皇帝特権>と呼ばれる九つの権限を有しており、帝国の国政全般に対して三院とともに責任を担う。 <皇帝特権> |
3、貴族という階級 帝国には貴族と呼ばれる特権階級が存在する。彼らは帝国成立時の功労者の子孫であり、永代貴族である。ただし、彼らの特権は枢密院に議席を得られる可能性を持つことと、星区・星系の領有を認められていることのみである。しかも、領有とはいえ、あくまでも私有ではなく、一種の尊称と考えるのが妥当かもしれない。永代貴族でない貴族、つまり一代貴族も存在する。帝国ならびに帝国市民に対して大きな功績があると認められた場合、一代限りの爵位が与えられ、一代貴族となる。永代貴族との差は世襲ができない一事のみである。 |
4、帝国の行政区分 帝国は、皇帝領・属州・私領からなる。 皇帝領は文字通り皇帝の直轄地であり、帝室に縁のある星系など、特殊な地域がこれに該当する。 私領は諸侯と称される上位貴族の領地であり、星区を最小単位とする。ただし、私領とは言え、私有しているわけではない。権限の小ささからいえば、尊称と考えるのが妥当。 皇帝領・私領のいずれにも該当しない地域は、属州と呼ばれ、帝国全土の96%を占めている。属州はさらに、太守管区・自治星区・自治星系・封土に分類される。太守管区は帝国行政の最小単位である行政区(星区単位)に分類される。封土は一代貴族に対して与えられた領土であり、この最小単位は星系である。無論、私領と同様に私有ではない。自治星区・星系は難治の地に対して元老院が自治権を与えた星区・星系を言う。自治権の幅は元老院の判断により異なる。 |
5、帝国の司法制度 帝国の司法制度は独特である。 民事・刑事いずれの場合も、まず当該の行政区裁判所が市民の付託に応えて審理し判決を下す。判決に不服がある際は控訴することになるが、民事の場合、まず星区法院、次に高等法院、最終的に帝国大法院まで控訴することが出来る。刑事の場合、帝国大法院判決に不服の場合は御前裁判(皇帝裁定)に持ち込むこともできる。星区法院以降の判決は、全て皇帝の名で出されるのが慣例である。民事・刑事いずれの場合も皇帝への直訴は完全に保障された権利であるが、直訴を行った場合、上級審を飛ばして皇帝裁定へ移行することになる点は注意すべきである。 軍に関係する事案の場合、まず査問会議、次に軍法会議、次に帝国大法院軍事法廷へと至り、最終的に御前裁判(皇帝裁定)へと至る。 貴族に関する事案は、まず元老院、次に議院が審理を行い、最終的に皇帝裁定へと至る。 行政(弾劾)の場合、まず枢密院が審理し、控訴すれば議院が、最終的に皇帝裁定へと至る。 立法(違憲立法審査)の場合、まず元老院、次に枢密院が審理を行い、最終的に皇帝裁定へと至る。 帝国司法の特徴は、民事を除く全ての裁きが最終的に御前裁判まで控訴可能という点にあり、あらゆる市民に皇帝への直訴権が保障されていることにある。 ![]() |
6、帝国軍の仕組みと実力 帝国軍は、宇宙軍、近衛軍、防衛軍から構成され、この三軍の上に統合司令部が形成されている。 <統合司令部> 軍の最高意志決定機関。独自の情報部門を持つ。 <宇宙軍> 宇宙艦隊(宇宙戦力)、惑星強襲部隊(地上戦力)、戦域防衛部隊(宇宙戦力・地上戦力)、情報・技術部門、司令部からなる。 <近衛軍> 皇帝の警護を主要な任務とする。独自の艦隊、地上戦力、情報部門を有している。 <防衛軍> 星区単位に駐留し、拠点防衛ならびに帝国の国防・治安維持にもあたる。 当初は宇宙軍と統合すべきとの議論もあったものの、帝国が分裂して以降は防衛軍の比重もまた大きくなることになった。 帝国軍は人類史上最大規模の軍事組織であることはまちがいない。しかしながら、帝国の広大さと市民権者の膨大さを思うとき、相当程度圧縮された小規模の軍隊であるという感を持つだろう。軍事組織とは単に存在し続けるだけで予算を食いつぶす存在であり、いかな帝国とても、経済や財政という魔物を制御するのは至難の業であったからだ。 防衛軍及び宇宙軍地上戦力の軍事作戦単位(帝国中期) 帝国軍総人員(宇宙軍・近衛軍・防衛軍の総計/帝国中期) 注:宇宙戦力における人員が少ないと思われるかもしれない。しかし、高度に発展した宇宙軍の艦艇にはそれほど膨大な人員を割く必要性がなかったのである。また、光速度の壁を突破して以降、戦略拠点への艦隊配置にそれほどの配慮が必要なくなった。つまり、機動力の増大は、必要とする戦域への宇宙軍の即時投入を可能にしてしまったのである。ただし、帝国の分裂以降、宇宙軍が大幅に増強されたことは特筆に値する事実だろう。現有戦力が必要を大幅に越えている場合でさえ、相互の軍拡競争は加速するという、人間性の変化がないことについての証左とも考えられるからである。 |