帝国概説補完・部分(from QuanTrinityWorlds)
※帝国地理、文化、官僚機構

【帝国とは何か】
 単語としての帝国には二種類の意味がある。ひとつは、「帝国主義」等に代表されるように、国家形態に関わりなく覇権主義的な拡大路線を志向する国家を指す場合。もうひとつは、皇帝などと称される世襲権力者による専制政体を有する国家を指す場合である。前者の代表としては<月=地球系共同体>があり、後者の代表としては5205年に成立した<帝国>が挙げられるだろう。
 これより概説するのは、人類単独による最後の統治主体である<帝国>についてである。

 

↑帝国旗(中期/皇帝領旗)

 

【目次】

・帝国の地理
1、銀河
2、銀河における帝国
3、………

・帝国の歴史
1、帝国史概説
2、………

・帝国の政治
1、帝国の議会制度
2、皇帝という仕組みと皇帝の権能
3、貴族という階級
4、帝国の行政区分
5、帝国の司法制度
6、帝国の行政機構
7、………

・帝国の軍事
1、帝国軍の構成と規模
2、帝国属州駐留軍、及び星区・星系保安隊
3、………

・帝国の文化
1、多文化混交傾向
2、文化波紋伝播論
3、宗教
4、………

・帝国の経済
1、………

付記
a、帝室系図
b、各種図版
c、各種索引
d、出典一覧、参考書籍一覧
e、………


【帝国の地理】

1、銀河

 帝国の属する銀河は、典型的な渦巻状銀河である。その渦の中心は射手座A付近と推定され、超大型のブラックホールであることが確認されている。
 銀河の推定直径は15万光年。銀河は横から見ると、中心に凸レンズ状の主体部(パルジ)があり、その周りを円盤状の渦が巻いている。銀河主体部(パルジ)の直径は約10万光年、厚さは約1.5万光年と推定されている。また周辺の円盤部は厚さが約5千光年と推定されている。こうした平板な広がりを一般に「銀河面」と称している。銀河面は恒星や星間物質が集中しており電波強度が大きく、文化・文明も銀河面にそってひろがる傾向を持つ。ただし、銀河面に対して垂直方向、すなわち上下にひろがるハロ部にも恒星は散在しており、こうした星団に居住する人類もいる。こうしたハロ部の人類の多くは球状星団に安住の地を見出した人々であり、<ヌル>もこうした球状星団のひとつに発展した。
 銀河は約2億4000万年の周期で回転しており、これを1宇宙年と呼ぶ。銀河年齢は100億年から110億年と推定されている。
 銀河は推定2200億個の恒星から構成されている。そしていわゆる恒星系のうち、およそ60%が連星系であり、35%が太陽系と似た単純星系、のこりの5%がいずれにも該当しない恒星系である。帝国市民が一般に連星系を嫌うと言われるのは、連星系が単に複雑であって可住惑星が存在する可能性が極端に低いためであり、また連星系の恒星の寿命が短いために矮星化している場合が多いからであって、特に単純恒星系に郷愁を感じているからではない。実際、連星系に住む帝国市民は一般に言われるよりはるかに多いのである。
 帝国中期までの段階で、銀河に反物質星、あるいは反物質星系が見つかったという報告はない。(中性子星、ブラックホールは幾つか確認されている)
 また、近傍の別の島宇宙(銀河)へ進出した事例は報告されていない(帝国人口動態調査局の公式見解による)。

2、銀河における帝国

 帝国は推定半径6万光年に及ぶ領土を持ち、推定1500億の恒星から構成されている。(今この瞬間も帝国周縁部では植民・移住が続行されており、正確な人口や恒星の数、もしくは帝国領の規模を確定することは事実上不可能である)
 帝国は銀河面に対してほぼ水平方向に拡張を続けているが、垂直方向への進出がないわけではない。ただそうしたハロ部は恒星がまばらであり質量にも欠けることから、現実に行われる植民・移住は無視できるほどに小さい規模である。
 ただ、水平方向の移住も、帝国末期には相当程度減少した。これは、銀河の周辺円盤部を構成する星々が、主として種族Uの星であって、重元素を多く持たなかった為と言われている。とは言え、銀河は人間の想像を絶するほどに広大であり、とても人間が浸蝕し食い尽くすことが出来るようなものではなかったのだが。
 また、銀河主体部(パルジ)への進入も、人類はある段階で断念せざるを得なかった。これはより実際的な理由であって、すなわち、中心へ近づくほどに星々が密になり、死んだ星々が増え、重力や電磁波が極端に強くなって、可住が困難になり、また航行も困難になるためである。
 結果、人類はパルジ外縁から周辺円盤部にかけて、推定半径6万光年の領土にいびつなリング状の帝国を築き上げることになったのである。


【帝国の政治】

6、帝国の行政機構

@、外交
 帝国には初期・中期の間、外交を行うための機構が存在しなかった。これは帝国以外に政治的統治主体が存在しなかったためである。つまり、「外国」という存在がなかったのだ。しかし、第九代皇帝以降、帝国には外交を行うための組織が必要となり、あらたに国務省が設けられた。
 国務省の下部機構のひとつに、<条約・協約の実効的施行と運営管理に関する連絡調整機構>という部局が存在する。これは典型的な対外諜報機関のひとつであって、当初の役割がいつの間にか大きく拡大したにも関わらず、名称だけは滅多に変えようとしないという、帝国行政機構の保守的な一面を表していて興味深い。こうした事例は、他の行政官庁にも間々見られる。

A、内政
 内政こそ帝国行政の真骨頂といえるだろう。帝国は桁違いに広大な領土と人口を抱え、多言語・多人種・多思想・多文化の恐るべきモザイクであるからだ。
 とは言え、一瞬ごとに拡張を続ける帝国に対して、こうした行政機構もつねに拡大してゆかねばならない宿命を持ち、悲壮感さえただようほどにその職務は激しく、同時にあまりに無力であったと言われる。

[ 主要官庁一覧 (抜粋)]

<財務省>
 帝国の財政・管財を一手に引き受けるのがこの財務省である。

<国税部>
 財務省からは独立した、巨大徴税官庁。皇帝領を除く全ての属州・諸侯領について、税務監査・徴税を行った。

<財政監査委員会>
 財務省・国税部の会計監査を行うために設けられた機関。委員会と称してはいるが、実際は行政官庁のひとつ。他の行政機構からは完全に独立しており、あらゆる行政機構に対する無制限の捜査権を持ち、制限された逮捕権、並びに告訴権を持つ。

<商務省>
 あらゆる恒星間貿易、惑星間貿易を統括し、あらゆる商業・経済活動をフォローする。
・交通管制部
 商務省に属す官庁のひとつで、銀河における民間交通を管制する。下部機構に、星区交通管制局、行政区交通管制センターがある。所属はそれぞれの星区、行政区だが、情報は常に上位部局へ上げられ集約される。横のつながりが密なことでも有名。

<司法省>
 あらゆる法・行政命令の法案作成・管理・施行・実施状況の監査を行う官庁。法案は元老院より作成を委託され、元老院に対して試案を提示する。実務上は、元老院の下部機構と言えるかもしれない。他に、司法判決の執行・監査も行う。

<統計省>
 帝国は、あらゆる分野で統計学的にのみ事象の把握が可能であって、そのために統計省は欠くべからざる行政機構の中核であった。
 あらゆるデータを時々刻々と数値化・図表化して処理し続け、全ての関係部局へ送り続けるという悲壮な役割を負わされたのがこの統計省である。社会調査庁、人口動態調査局、銀河地理調査局、などの各部局・下部機構が帝国が完全に崩壊する日まで休み無く動き続けた。権限の大きさに反比例するように公務員にはまったく人気がなく、平均して三年以上務める者は極めてマレという悲惨な官庁。別名は「図表の地獄」。

<情報通信規格管理機構>
 あらゆる情報通信の規格を検討・決定し、それを帝国内に周知徹底させることが当初の役割だったが、その名称以上に多くの役割を負わされた巨大行政機構。帝国のあらゆる基幹情報ネットワークを監査し、その規格を決定し、許諾を出す。また、帝国の情報規格が不公正なものとならないよう監視し、使用言語の決定、情報バイパスの整備、帯域の管理、憲法並びに関係法に反する情報の削除と必要な場合の逮捕など、おそろしく守備範囲の広い官庁。権限の大きさに反比例するように帝国の公務員には敬遠されるのは、統計省と同様に、あまりにも過酷で悲壮な役割を負わされた為と思われる。

<刑事警察機構>
 警察機構は、行政区警察、星区警察、帝国警察の三種類にわかれる。
 最大の規模を持っていたのはもちろん行政区警察で、各行政区に配置され、当該地区の犯罪を取り締まった。
 星区警察は恒星間にまたがる大規模な犯罪について取締をおこなった。
 帝国警察は帝国中央の行政機構や主要施設を警備し、帝国全土に渡って情報収集を行った。人員規模としては最小である。(こうした規模になったのは、帝国があまりに広大なために、帝国全土を股に掛ける犯罪、などというものが空想上の産物でしかあり得なかったためでもある)
 また、上記三つの警察機構の内、帝国警察は検察としての役割も併せ持っていた。行政区警察・星区警察は単純な司法警察であり、各星区・行政区には検察局がおかれていた。星区検察局は管区(太守管区)の、行政区検察局は行政区の、それぞれ管理下におかれていた。帝国警察は元老院直属の機関である。
 ちなみに、開発初期の星系などについては、防衛軍や属州駐留軍が警察の役割を代行する場合があった。
 星区・星系保安隊は実際上は警察機構とかわらないのだが、より機動的に活用された。組織運用の上では、星区・星系保安隊は軍に属する。

<帝国憲法擁護庁>
 名称とは裏腹に、この組織は典型的な情報機関のひとつである。その目的は多岐に及ぶが、主として自治星区・星系に対して、当該地域の過激な暴力・テロ組織の動きを監視し、他星系への煽動やテロを阻止することにある。また、明らかに憲法に反する様々な事象を三院ならびに皇帝へ報告する役目を負う。

<植民局第24課>
 植民を統括する植民局にあって、不法な植民を取り締まるのがこの24課である。非合法な植民は、海賊・テロリストの策源地、密貿易拠点になる可能性が高いため、帝国はこれを必死で押さえ込もうとした。帝国後期には移民局第7課と統合され、<移民及び植民に関する各法に基づく取締機構(イルダ)>として独立した。


【帝国に於ける文化】
 帝国の広大さ故に、帝国にはかつて存在し、あるいは未来に存在するであろうあらゆる文化様式を持って尚あまりあるほどの人口と空間がひろがっている。

1、多文化混交傾向
 帝国中央はありとあらゆる星系星区からの外交団、使節、通商代表などが集まる場所であり、そこには怖ろしく多様な様式が存在し、混じり合って、一瞬ごとに新たな様式として変貌を遂げ続けている。故に、帝国中央の文化傾向は完全にカオス的であると言うことができるだろう。
(具体的事例は割愛)

2、文化波紋伝播論
 帝国は推定半径6万光年に及ぶ領土を持ち、推定1500億の恒星から構成されている。可住惑星を持つ恒星系はこれよりはるかに少ないものの、帝国の総人口は指数的にしか表現できないほどに膨大である。
 しかし、幸いなことに帝国市民の多くはほぼ銀河面に集中しており、故に二次元的な文化把握も不可能ではない(ただし、より細かい文化圏を議論する場合、三次元的な空間把握は不可避である)。
 地球からひろがった初期人類は、原因の判然としない奇妙な意識作用によって、自己と類似した外見・言語文化を持つ集団に固まるという傾向を持っていた。これが遺伝的純血を求める故のことか、あるいは文化的な優位性を信じる故の行動か、あるいは別の要因があるのかについて明確な結論を出すことは難しい。なぜなら、帝国に至るまでの数千年の拡張期に文化が完全に混交されてしまった為である。むろん、各星区・星系には独自の文化とでも呼ぶべきものは存在するものの、それが他者のそれに優越するとか、文化的な侵略を受けるとかいった考え方は、多くの帝国市民の理解しがたいものであろう。遺伝的に混交し得ない(通常の遺伝子結合を行うと確実に致死性因子が発現する)というケースが存在することは確かだが、それは多くの場合遺伝子操作により容易にクリアできる問題である。
 ただし、広大無比な帝国にあって、例外のない事柄など存在しない。文化についてもそれは同様であり、文化的純潔や遺伝的純血を信奉する少数の狭量な集団も存在する。ただし、絶対数から言えば、これは少数派であり、恐らく一割にも満たないのではあるまいか。
 ともあれ、帝国の大多数の地域で文化は常に移ろい変貌し続け、それは光速を上回る恒星間貿易や人口移動、情報伝達によってひろがってゆく傾向がある。それは言語だけなく、服装や食習慣、哲学や人工天体の設計思想まで、ありとあらゆる分野に及ぶ。こうした文化の広がりは、それが始まった星区・星系を中心にほぼ同心円状に(球状に)ひろがってゆく。こうしてひろがった円は、ある段階で他の文化の円と重なって、新たな文化としてそこから再びひろがってゆく。いわば、雨垂れが水面に無数の波紋を描き、その波紋の重なりがあらたな波紋を生み出すが如き様子を見せるのである。これを、「文化波紋伝播論」と呼ぶ。銀河平面図上に文化がひろがって行く様子を、時間を軸にしてカラフルに描く「文化伝播図」は、抽象芸術めいた実に美しいものである。

3、宗教
 帝国中期に至ってもなお宗教は存在していた。宗教がある種の文化であったり、流行であったり、娯楽であったりするケースも多かったのだが、ともかく存在は続いており、古典的な意味での純然たる宗教も存在していたようである。宗教の内容は、地球時代から続く古典的な宗教に加えて、より哲学的な内容を持つ宗教や、より神秘主義的な色彩を濃くした宗教、支配イデオロギーの一部としての宗教など、様々である。
 帝国の大部分は心霊や神観念を理解することはできたが、それを信じる者は少数派と言うべきだろう。帝国中期にはほとんど全ての事象が科学的・理論的に説明可能であったことに加え、従来宗教の神秘主義において言われていた奇跡の類が、例えば超現実物理学や精神文明社会が示すささやかな事象を越えることが出来なかったことも、こうした無神論の増加を助けたと思われる。したがって、古典的な神々を信じる宗教は後退し、かわってより思索的・哲学的・倫理的な宗教や、より純粋な(狂信的な)創造主信仰へと収束していった。後者は、特に”造物主は我々の思考や理解を大きく上回る高次の存在であり、造物主を理解することはできないが、ただひたすらに讃え、受け入れよ”という、ある意味で開き直りにちかい熱狂を持った宗教が多かったようだ。
 帝国行政当局も、あるいは地方行政機構もこうした宗教には極めて寛容、というよりむしろ存在自体を無視同然に扱っていた。宗教自体、その影響力はそれまでのどの時代よりも小さかったし、宗教を信じているという人間は圧倒的に少数派だったからである。ただし、帝国憲法擁護庁などは、宗教や哲学が危険な熱狂を帯びて地方行政や公共の福祉に反することがないように監視を行い、時に干渉したとも言われている。その干渉のもっとも典型的なケースが、<解放の哲学>の事例に見られる(下記*Bu3−1参照)。
 帝国中期の宗教を要約すると上記のようになるのだが、特筆すべき宗教も幾つか存在する。それは前光速時代から続くと想像される信仰集団、<聖母子の盾>と<観察者教団>である。両者とも、その名称は外部の研究者が名付けたもので、彼ら自身は決して自身の信仰の名称を明らかにしない。また外部へ布教・説明を決して行わないという神秘主義的な側面も共通する。
 <聖母子の盾>は、恐らくは<月=地球系共同体>の黄昏時に生まれたものと推定されている。その信仰の対象は「聖なる母とその娘」で、彼らの教義はすべて「母と娘」へと集約される。その教えによれば、母は極めて長命な存在で、永遠ともいえる時を歩み続ける宿命を背負った存在であって、その娘は「母ひとりから」生まれた存在であり、人類と宇宙の終焉を看取ることをその役割とする、という。彼ら<聖母子の盾>は今も銀河のどこかを歩み続ける聖母子を助け、その重荷を支えることを手伝うことを教義の主体としているようだ。秘密結社と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。
 多くの宗教学者や専門家は、処女懐胎(単性生殖とは異なる)などの教義から、<聖母子の盾>を前地球時代の古典宗教「中期キリスト教」の歪んだ一形態と考えている。信者の分布や人数などは、彼らの秘密主義のためにまったく明らかになっていないが、一説には、全帝国に信者がおり、その総数は千億に達するとの見方もある。また、帝国の中央行政機構に信者が特に多いとも言われるが、これは根拠の薄い俗説にすぎない。
 <観察者教団>は、多くの専門家の必死の調査にも関わらず、その実体がほとんど知られていない。<観察者教団>も<聖母子の盾>と同様に秘密主義で閉鎖的な結社だが、その秘密主義は<聖母子の盾>の比ではない。それでも、いくつかの不確かな情報から推測されるのは、この教団が<観察者>と言われる存在を信仰しているということと、信仰の末に信者は階梯を登って自身も観察者へ「移行する」ことが出来る、と考えているらしいことである。彼らは造物主といった一神論的な絶対者を信仰しておらず、といって多神論的な神々を信仰しているわけでもないらしい。宇宙はただ始まり、いつか終わると信じている。そこに宗教観念の入り込む余地はないと言う。ただ、彼らは古典的な宇宙論「宇宙転生説」を信じており、宇宙は果てしない創世と終焉を繰り返すと考えている。そして、繰り返される宇宙の転生を観察し続ける存在こそ、「観察者」であるという。彼らは「観察者」を、より高次の意識体と考えている節があり、過去、精神文明との第一次接触の際に、極めて活発な活動を行ったことから、初めて教団そのものの実在が確認された。
 多くの専門家は、この教団が現在も実在していることは認めているものの、その教義や実体については百家争鳴という有様でまったく確定していない。しかし、現在有力な学説は、<観察者教団>は前地球時代の古典宗教「神仙信仰・道教」の異端の末ではないか、というものである。こうした有様なので、信者の分布や総数はまったく不明である。

*Bu3−1
──解放の哲学は、その基礎において、地球時代の哲人エピクロスの思想を敷衍させ、発展させたものであるということが出来る(中略)エピクロスの快楽主義は刹那的な快楽を否定したが、解放の哲学はむしろ自己の欲求の発露としての刹那的快楽を是認し、かえってその一瞬一瞬を重視する。これは、医学の長足の進歩により長命となった多くの帝国市民が死を生の一部と見なすことを拒否する傾向へのアンチテーゼ的な意味合いが強い。すなわち、一瞬ごとの積み重ねこそが生であり、生を享受することが避け得ぬ死への正しい対峙の仕方である、との思想(中略)そのためには、あらゆる規制や制約は全うすべき生への妨げになる、という考えが生まれたのが、帝国歴2600年代のことである(中略)解放の哲学は、それ故に、自己の生への執着に重きを置く哲学であり、必然的に他者の生命や行動への干渉は行わない。また、自己の安全こそ生を(すなわち快楽を)全うする道であるとの主張から、帝国の統治をむしろ歓迎し、帝国法が過干渉にならないかぎりにおいて、これを支持している。これは、解放の哲学の当初の基本理念と明らかな矛盾をきたしており(中略)帝国行政当局が長老部へ何らかの干渉を行い、帝国統治の障害とならないようねじ曲げた疑いがある……(後略)
(ある思想史家の見解より抜粋)



【付記】



d−1、出典一覧
『人口動態白書(第86版)』人口動態調査局
『元老院報告第205139号「防衛機構再編についての勧告」』
『帝国の文化──文化波紋伝播論を中心に──』 クレーウェ編、第13版

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