【帝国の政治】 6、帝国の行政機構
@、外交
帝国には初期・中期の間、外交を行うための機構が存在しなかった。これは帝国以外に政治的統治主体が存在しなかったためである。つまり、「外国」という存在がなかったのだ。しかし、第九代皇帝以降、帝国には外交を行うための組織が必要となり、あらたに国務省が設けられた。
国務省の下部機構のひとつに、<条約・協約の実効的施行と運営管理に関する連絡調整機構>という部局が存在する。これは典型的な対外諜報機関のひとつであって、当初の役割がいつの間にか大きく拡大したにも関わらず、名称だけは滅多に変えようとしないという、帝国行政機構の保守的な一面を表していて興味深い。こうした事例は、他の行政官庁にも間々見られる。
A、内政
内政こそ帝国行政の真骨頂といえるだろう。帝国は桁違いに広大な領土と人口を抱え、多言語・多人種・多思想・多文化の恐るべきモザイクであるからだ。
とは言え、一瞬ごとに拡張を続ける帝国に対して、こうした行政機構もつねに拡大してゆかねばならない宿命を持ち、悲壮感さえただようほどにその職務は激しく、同時にあまりに無力であったと言われる。
[ 主要官庁一覧
(抜粋)]
<財務省>
帝国の財政・管財を一手に引き受けるのがこの財務省である。
<国税部>
財務省からは独立した、巨大徴税官庁。皇帝領を除く全ての属州・諸侯領について、税務監査・徴税を行った。
<財政監査委員会>
財務省・国税部の会計監査を行うために設けられた機関。委員会と称してはいるが、実際は行政官庁のひとつ。他の行政機構からは完全に独立しており、あらゆる行政機構に対する無制限の捜査権を持ち、制限された逮捕権、並びに告訴権を持つ。
<商務省>
あらゆる恒星間貿易、惑星間貿易を統括し、あらゆる商業・経済活動をフォローする。
・交通管制部
商務省に属す官庁のひとつで、銀河における民間交通を管制する。下部機構に、星区交通管制局、行政区交通管制センターがある。所属はそれぞれの星区、行政区だが、情報は常に上位部局へ上げられ集約される。横のつながりが密なことでも有名。
<司法省>
あらゆる法・行政命令の法案作成・管理・施行・実施状況の監査を行う官庁。法案は元老院より作成を委託され、元老院に対して試案を提示する。実務上は、元老院の下部機構と言えるかもしれない。他に、司法判決の執行・監査も行う。
<統計省>
帝国は、あらゆる分野で統計学的にのみ事象の把握が可能であって、そのために統計省は欠くべからざる行政機構の中核であった。
あらゆるデータを時々刻々と数値化・図表化して処理し続け、全ての関係部局へ送り続けるという悲壮な役割を負わされたのがこの統計省である。社会調査庁、人口動態調査局、銀河地理調査局、などの各部局・下部機構が帝国が完全に崩壊する日まで休み無く動き続けた。権限の大きさに反比例するように公務員にはまったく人気がなく、平均して三年以上務める者は極めてマレという悲惨な官庁。別名は「図表の地獄」。
<情報通信規格管理機構>
あらゆる情報通信の規格を検討・決定し、それを帝国内に周知徹底させることが当初の役割だったが、その名称以上に多くの役割を負わされた巨大行政機構。帝国のあらゆる基幹情報ネットワークを監査し、その規格を決定し、許諾を出す。また、帝国の情報規格が不公正なものとならないよう監視し、使用言語の決定、情報バイパスの整備、帯域の管理、憲法並びに関係法に反する情報の削除と必要な場合の逮捕など、おそろしく守備範囲の広い官庁。権限の大きさに反比例するように帝国の公務員には敬遠されるのは、統計省と同様に、あまりにも過酷で悲壮な役割を負わされた為と思われる。
<刑事警察機構>
警察機構は、行政区警察、星区警察、帝国警察の三種類にわかれる。
最大の規模を持っていたのはもちろん行政区警察で、各行政区に配置され、当該地区の犯罪を取り締まった。
星区警察は恒星間にまたがる大規模な犯罪について取締をおこなった。
帝国警察は帝国中央の行政機構や主要施設を警備し、帝国全土に渡って情報収集を行った。人員規模としては最小である。(こうした規模になったのは、帝国があまりに広大なために、帝国全土を股に掛ける犯罪、などというものが空想上の産物でしかあり得なかったためでもある)
また、上記三つの警察機構の内、帝国警察は検察としての役割も併せ持っていた。行政区警察・星区警察は単純な司法警察であり、各星区・行政区には検察局がおかれていた。星区検察局は管区(太守管区)の、行政区検察局は行政区の、それぞれ管理下におかれていた。帝国警察は元老院直属の機関である。
ちなみに、開発初期の星系などについては、防衛軍や属州駐留軍が警察の役割を代行する場合があった。
星区・星系保安隊は実際上は警察機構とかわらないのだが、より機動的に活用された。組織運用の上では、星区・星系保安隊は軍に属する。
<帝国憲法擁護庁>
名称とは裏腹に、この組織は典型的な情報機関のひとつである。その目的は多岐に及ぶが、主として自治星区・星系に対して、当該地域の過激な暴力・テロ組織の動きを監視し、他星系への煽動やテロを阻止することにある。また、明らかに憲法に反する様々な事象を三院ならびに皇帝へ報告する役目を負う。
<植民局第24課>
植民を統括する植民局にあって、不法な植民を取り締まるのがこの24課である。非合法な植民は、海賊・テロリストの策源地、密貿易拠点になる可能性が高いため、帝国はこれを必死で押さえ込もうとした。帝国後期には移民局第7課と統合され、<移民及び植民に関する各法に基づく取締機構(イルダ)>として独立した。
|