ここには、同一の宇宙・未来史を源とする一連の物語がおさめられています。
それぞれの物語は、それぞれに完結していますが、そのすべてはひとつの大きな流れの中の、つまり歴史という大きな流れのなかのひとコマにすぎません。 これらの物語群は、現在わたしたちの生きる世界・宇宙と同じか、あるいはほとんど変わらない宇宙を描いています。けれども、そこに現れるのは現在のわたしたちではなく、未来のわたしたちのすがたです。いえ、より正確には、無限の分岐の果てに現れるかもしれない、ヒトのひとつの可能性です。
この物語の全編を通して登場するのは、おそらくたったのひとりだけ。そのほかに、主役級のふたりの人物を交えて、三人がこの物語群をすすめていくことになるでしょう。
けれど、主役の三人がまったく登場しない物語も多くおさめられることになるはずです。なぜなら、クオン・トリニティの世界にはそれこそ無限の人類が生きていて、さまざまな人生を送っているからです。ことによると、ヒト以外の知性体も。
この物語群の真の主役は人類であり、人類の未来そのものです。
はじまりは2000年、終わりは宇宙そのものの終焉の時、久遠の彼方。
架空の、若しくは未来の人々の息吹を感じていただければ、紡ぎ手としてこれにまさる喜びはありません。
それでは、どうぞごゆっくりとお楽しみください。
ヒトと、ヒトの未来の物語を……。
2000/08/22
Siono Izumi
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